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相続税の申告の期限
1 相続発生から相続税申告までの手続きに関する期限について
相続が発生すると、葬儀を行い、相続財産を調査してその内容を把握し、自分が相続税を支払う必要があるかどうか確認するなど様々なことをしなければならず、その中には期限が決められているものが多くあります。
特に、相続税の申告については、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月が期限になります。
相続税申告を行う前に済ませておかなければならない手続きもあり、それらの手続きについて相続が発生してから慌てて確認すると、誤った対応をしてしまう危険性がありますので、お早めに確認しておくことをおすすめします。
2 遺産相続の手続きの流れ
⑴ 被相続人の死亡(相続発生)
⑵ 死亡届、火葬
死亡届は、医師に作成してもらう死亡診断書と一体になっているものです。
死亡届は、相続発生後7日以内に提出する必要があります。
死亡届と火埋葬許可申請書を市区町村役場に提出し、火葬許可証をもらいます。
この火葬許可証を葬儀社に提出して、葬儀の申込みをします。
⑶ 遺言書を探す、検認手続(自筆証書遺言の場合)
ア 遺言書があるかどうかによって、その後の手続が全く変わってきます。
遺言書がある場合は、原則として、遺言書の内容に従って遺産を分けることになります。
遺言書がない場合は、全ての相続人間で遺産分割協議をして遺産を分けることになります。
イ 自筆証書遺言や秘密証書遺言は、自宅の金庫、タンスや銀行の貸金庫にある場合が多いと思われます。
公正証書遺言は、相続発生後、全国の公証役場で検索ができます。
ウ 自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、勝手に開封せずに、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所において、検認手続をする必要があります。
⑷ 相続人調査
遺産分割協議をするにあたって、相続人を確定する必要がありますので、相続人調査をしなければなりません。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本等を集めていく作業が必要になります。
⑸ 相続財産調査
遺産分割協議をするにあたって、どのような遺産があるかを確定する必要がありますので、相続財産調査をしなければなりません。
主な相続財産としては、不動産、預貯金、現金、株式等の有価証券等が挙げられます。
⑹ 相続放棄、限定承認(熟慮期間3か月)
遺産の中に借金が含まれている場合、その借金も相続の対象になります。
特に、プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合は、相続人が借金を支払わなければならなくなってしまいます。
被相続人の借金を相続したくない場合は、相続放棄を検討することになります。
相続放棄も、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
相続放棄には期限があります。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄をするかどうか決めなければなりません。
この相続放棄の期限のことを、熟慮期間といいます。
相続放棄が認められると、初めから相続人ではなかったことになります。
しかし、プラスの相続財産を処分するなどしてしまうと、相続放棄が認められなくなるので注意が必要です。
⑺ 準確定申告(相続開始後4か月)
被相続人の遺産を相続した場合、被相続人の生前の所得税を申告する必要がある場合があります。
これを、所得税の準確定申告と言います。
所得税の準確定申告とは、被相続人が所得税の申告義務を負っていた場合に、相続人が被相続人の代わりに確定申告を行うものです。
通常の確定申告は、対象年度の翌年の2月16日から3月15日までですが、準確定申告は、被相続人の死亡後4か月以内となっています。
⑻ 相続税の申告、納税(相続開始後10か月)
遺産の金額によって相続税が発生する場合があります。
相続税には基礎控除が定められているので、相続財産が基礎控除の額の範囲内であれば、相続税申告が不要ですし、相続税を支払う必要はありません。
他方、基礎控除額を超える遺産がある場合は、原則として相続税の申告と納税が必要になります。
相続税の申告と納税には、相続開始10か月以内という期限があります。
申告だけではなく、納税も含めて10か月以内に行わないといけない点に注意が必要です。
⑼ 遺留分侵害額請求(相続開始と遺留分侵害があったことを知ったときから1年)
遺留分とは、相続人のうちの一部の方について、相続財産のうち一定の割合を認めるものです。
遺言や死因贈与などによって最低限の取得分である遺留分を侵害された場合、法定相続人は、遺留分権利者として、遺留分の侵害者に対し、遺留分侵害額を請求することができます。
兄弟姉妹を除く法定相続人は、遺留分侵害額請求をできる場合がありますが、その期間は法律によって決められています。
遺留分侵害額請求をすることができるのは、被相続人の死亡と遺留分侵害の事実を知ってから1年以内です。
また、被相続人の死亡から10年が経った場合には、たとえ遺言や死因贈与などによる遺留分侵害の事実を知らなくても、遺留分侵害額請求ができなくなります。
⑽ 相続税の税額軽減措置の適用(相続税申告期限後3年)
ア 相続税には、様々な税額軽減措置が設けられています。
具体的には、配偶者の税額軽減といって、配偶者であれば法定相続分または1億6千万円までの相続分に対しては相続税がかかりません。
また、遺産の中に宅地がある場合には、小規模宅地の特例が利用できる場合があり、土地の評価額を最大80%軽減できる場合があります。
イ ただし、これらの相続税軽減を受けるためには期限があります。
遺産分割協議がまとまらない場合であっても、相続税の申告期限内である相続開始から10か月以内に、未分割として相続税の申告をする必要があります。
そして、この申告をする際、「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を作成し、相続税申告書に添付して税務署に提出します。
申告期限後3年以内の分割見込書とは、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割協議ができる見込みがあるという内容の書面です。
この書面を提出した後、3年以内に遺産分割協議がまとまった場合は、遺産分割協議終了後4か月以内に税務署に対して、更正請求をすることによって、相続税の軽減措置を受けることができます。
ウ 例外的に、遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請を行い、この申請が税務署長によって認められた場合には、3年が経過した後であっても、相続税の軽減措置を受けることができます。
ただし、この申請が認められるのは、遺産分割調停等、遺産分割の解決に向けた何らかの法的手続がとられている場合に限られます。